「書体(タイプフェイス)の意味とそのデザインのあり方」


株式会社 タイプバンク

 書体とは、統一的なコンセプトに基づいて創作された文字・記号などの一組のデザインをいいます。よい書体というのは、一つには書体のコンセプトがしっかりしているということ、また二つ目に、書体の完成度が高いということだと思います。
 書体を設計するうえで、例えば本文用の書体なのか見出し用なのかということから、字面やウエイトが決まってきます。縦組み用なのか、横組み用なのか、あるいは兼用なのかということで、かなの形状、ふところ具合が決まってきます。力強い、優しい、伝統的であるとか、現代的であるとか、堅い、柔らかいといったイメージで、エレメントやバランスが変わってきます。
 また、その書体がどういった媒体で使用されるものなのかということも大切です。具体的にいうと、その書体が活版印刷用の書体なのか、写真植字用の書体なのか、あるいはコンピュータの画面用なのかプリンタ用なのかということで、視覚調整の仕方が変わってきます。
 そういったコンセプトから書体設計は決まってきます。具体的には、字面、ベースラインといったモデュール(図1-1)、ウエイト(図1-2)、エレメント・ふところ(図1-3)、バランス・重心(図1-4)をどのように設計していくか、視覚調整(図1-5)の仕方をどうしていくか、字体・字形の考え方をどうしていくかが決まってきます。
 そして結果的に、その書体設計にきちんと沿って1書体7000字〜8000字の文字がしっかりとできあがっているということがその書体の完成度になります。


図1-1 モデュール
図1-2 ウエイト
図1-3 エレメント・ふところ
図1-4 バランス・重心
図1-5 視覚調整


図1-1 モデュール
 欧文書体を設計するときにベースライン、キャップライン、ディセンダという基準ラインがあるように、字面というのは日本語の文字設計に必要なモデュールです。
 その周りにある四角形が仮想ボディです。仮想ボディというのはべた組みの送り幅、つまり文字を単純に入力したときに並べられる幅になります。字面を大きく設計すればするほど、べた組みの時には文字が詰まって見えますし、小さくすればするほど文字と文字の間が空いて見えるということになります。ばらばらにも窮屈にも見えない、読みやすい文字の大きさを決定する大切な基準になります。


図1-2 ウエイト(文字の太さ)― タイプバンクの明朝体とゴシック体
 平成書体のように、ウエイトを数字で表現する場合もありますが、タイプバンク書体は、従来の欧文ファミリーのウエイト表示方法に基づいて表現しています。


図1-3 エレメント・ふところ
 文字を構成する要素をエレメントと呼び、そのエレメントに囲まれた空間をふところといいます。ひとつひとつのエレメントにも名称があり、それぞれのエレメントをどうデザインし、ふところの取り方をどう統一していくかがその書体イメージを決める鍵になります。


図1-4 バランス・重心
 それぞれの文字には重心があります。その重心の高さや傾きが一定になっていないと、組まれた文章を読んだときに目の動きが上下左右にぶれて、目が疲れやすくなります。タイプバンク書体のように、可読性の高い書体は、ひとつひとつの文字の重心やバランスが統一されています。


図1-5 視覚調整
 人の視覚は見たそのものを脳に伝えるのではなく、その周囲の環境や状態によって、少し変化させて映します。例えば図にある太い縦線と交差する2本の斜線は、人の目にはその交差した部分からずれて見えます。こういった人間の目の錯覚を考慮して、各々の文字エレメントの太さや位置をデザインしていかなければなりません。


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